4.実現のために

前書き 1. 2. 3. 4. 5.

 まず、発達障がい者を対象とした音楽活動は現在もいくつもあるのですが、その多くは療育的な作用、または心身の充実を目的としていて、一般の音楽教室と同様なレベルの演奏技術習得は目指していないことが多いです。

 つまり、音楽は発達障がいによる問題の緩和のために使う、という考え方です。

 

 それに対し私はまず音楽を習得することで副次的に(でも強力に)発達障がいにおける課題に対して役立つと考えています。

 ですので、あくまで「楽器って弾けたら楽しそうだな~」というのをスタートに来ていただけたら、と思っています。大変役立つことは知っておいていただいて、興味があれば是非支援させていただきたいと思っています。

 

 さらに、ここまでお話ししたようなことを実現するためにはいくつもハードルがあります。

 

i.金銭的な余裕がない

 当事者の方にヒアリングすると仕事を安定して続けることが難しい人が多いことに気付かされます。就職しても周囲とうまくいかずに辞めることになってしまったり、仕事がうまくこなせなかったり、疲れやすかったり。

 子どもであれば保護者の方が習い事をさせてあげることはできますが、大人になるとこういったことにお金を使うのは難しいようです。

 

 そのため、月謝を抑えるだけでなく、練習環境もある程度は指導側で用意する必要が出てきます。楽器や練習場所などです。

 時折誤解されている方を見かけますが、音楽のレッスンというのは通うだけで上達するというものではなく、練習で身に着けるべきものを知ったり軌道修正するといったもので、練習ができることが前提になっています。(レッスンで身に着けたことは繰り返し実践しないと2日後には忘れていることが大半です)

 

 今のところ、月謝に関してはなるべく一度にレッスンを受ける人数を増やすことで極力下げ、練習環境では当事者の方たちの居場所となっているコミュニティカフェなどとうまく連携できないか模索中です。特に私が専門とするギターについては比較的実現しやすいのではないかとも思っています。

 

ii.発達障がい者は不器用で楽器演奏に向いていないという誤解

 これは当事者の方も割と思っていらっしゃいます。
この誤解を解く、というのも必ず必要になってきます。

 実際に発達障がいのある方は体を上手に使えないことが多く、歩き方が変わっていたりまっすぐ座っていられなかったりします。

 ところが実際のところこれはほとんど影響しないように思います。

 

 実際に指導していて気付いたのですが、演奏法を指導した時、教えたとおりにできない方は多いです。しかし、実は指導の方法に問題がある場合も少なくありません。

 

 例えば、指の使い方を指導する時、先生は「こう弾いてくださいね」と言って実際にやって見せたり、生徒の指を持って動かしてみせたりします。

 ところが、発達障がいだと元々体を扱うことも上手でありませんし、相手の真似をすることも苦手ですのでこの指示ではちゃんと伝わりません。先生にしてみればそれでちゃんと伝えたつもりなので、それでできなければ「ちゃんと伝えたのにできない、やってくれない」となってしまうことも多いです。これを以って、発達障がいがあると習得が難しいのだと思ってしまう方が多いのだと思います。おそらく実際にレッスンを受けたことがあるけど挫折してしまった当事者の方も少なくないんじゃないでしょうか。

 

 さて、この指示の仕方のどこが問題だったんでしょうか?

 実は「こう弾いてくださいね」の中にはとてもたくさんの動作が含まれています。指のどの関節を曲げるのか、曲げないのか、どこの筋肉を使うのか、それとも重さを使うのか、押すのか、引くのか。

 この中には先生にとっては当たり前の動作もたくさんありますので、先生としてはそれは省いてしまうことが多いでしょう。指の力だけでは絶対に足りなければ自然と腕の重さなども使うでしょうが、自然なことなのでそれも省いてしまうかもしれません。もし腕の重さを使うなら腕に力が入っていては使えませんので、自然と脱力するでしょう、しかしこれも省いてしまいます。

 

 私が指導した中にいくら教えてもごく簡単な動作をうまくできない子がいました。しかし、あらゆる当たり前の動作を説明し、また動作の目的も併せて説明したところ、劇的に改善しました。それ以降、いつまで経っても上達しない子はいませんし(練習をしない方は別ですよ)、定型の方を含め過去に挫折した経験がある方にもレッスンは好評をいただいています。

 

 動作の目的というのは、例えば「指の重さだけでは将来速い曲には絶対対応できなくなるから腕の重さを使おうね」といったことです。この説明がないと、仮に動作を理解できても、「今は指だけで弾けるし腕の重さを使うのはなんだか慣れなくて違和感があるからいいや」となってしまいます。特に今までしたことのない動作には”違和感”を感じて拒否してしまうことは多いです。

 

 上記の指導ですが、例えば小さい子どもなど、理解できないのではないか?とお思いになるかもしれません。

 子どもを馬鹿にしちゃいけません、できるんですヨ。びっくりするくらい理解してくれます。言葉の意味が伝わらなくても、動作をとことん細分化して手取り指取り体験させてあげると必ず伝わります。理解力に大幅な遅れがある子への指導は経験がありませんが、多少であれば少なくとも問題ありません。

 

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